第208回 国会 衆議院 内閣委員会 第23号

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こども家庭庁設置法案(208国会閣38)
こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(208国会閣39)
こども基本法案(208国会衆25)
子どもの最善の利益が図られるための子ども施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案(208国会衆8)
子ども育成基本法案(208国会衆27)

上野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。

石原(宏)委員 自民党の石原宏高です。

 参考人の皆様、陳述ありがとうございました。質問に入らせていただきたいと思います。

 まず初めに、古賀参考人にちょっとお伺いしたいんですが、データの活用というのが子供政策を推進していく上で重要だという話があるんですけれども、今までのこども家庭庁の設置法案の審議の中で、また基本法の審議の中で、質問者の中から、子供のデータは慎重に扱わなきゃいけないとか、じゃ、子供のデータって何という話の中で、委員の方で、学習データとか家庭の収入とかお子さんの病歴とか、また、政府の方からは、保育園から小学校に上がるときの送り出しの申合せ書とか、また、児童相談所の記録みたいな話があったんですけれども、先生が言われているデータというのはどんなものなのか。また、欧米なんかでは、こういうデータを取って非常に利用をされて、いいみたいなものがあれば、ちょっと御意見を聞かせていただければと思います。

古賀参考人 先ほど御紹介したデータというのは、もうかなり公的になっているものをお示ししました。

 それで、そもそも、インデックスボードというのはアメリカでもう既に動いていて、政策実現のためにそのデータを取っているんです。ですから、個人情報に抵触するとかそこに深入りするという形でなくても、取れるものが既にあるということはまず御認識いただきたいということと、それからまた、今お話あったものは、例えば、自治体レベルでは把握していて、それを使えるという状態のものになっていれば、それはそれで個別にも使っていただくことは可能だと思っております。

 ですので、先ほど示したものは、極めて公的な、もう既にオープンになっているものをお示ししたということになります、はい。

石原(宏)委員 先生のいろいろな執筆されているやつを読んだんですが、そのデータというのは、何となく感じとしては意識調査とかアンケート調査みたいな感じがしたんですけれども、それがやはりメインになるということでよろしいでしょうか。

古賀参考人 意識調査というのはいろいろな、国レベルでたくさんやっておりますので、それを集めていくということをするだけでもかなりのことが分かります。また、それを総合分析するという、つなげていくという作業は実は余りやられていない。単体、単体で、ばらばらなんですね。ですから、先ほどお話ししたように、問題が一元的じゃないんですよ。ですから、幾つものデータを複合的に分析して、その中から一体どういう問題性が中心にあるかをやはり理解していかなくちゃいけないと思います。そういう意味です。

 それから、同時に、アンケートや意識調査だけでは分からないところがありますから、私自身も、インタビューや、あるいはまた観察をずっと続けてきました。フィールドに入ってやっていましたけれども、そういったものもデータとして使っていただきたい、質的なデータを有効に使っていただきたいと思って提案していきました。よろしいでしょうか。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 次に、古賀参考人と、あと野村参考人と末冨参考人にお聞きしたいんですけれども、私は、こども家庭庁ができても、やはり子供政策を実行していく実動部隊というか、そういうのが必要なんじゃないかと思います。

 例えば、古賀参考人は、学校ネットワークみたいな形で、学校とか保育園とか図がありましたけれども、また、野村参考人の方は、もしかするとこれがコミッショナーの役割なのかもしれませんが、また、末冨参考人のは、最後の方のページに警察とかいろいろありましたけれども、実際に今もう実動部隊のようなものは児童相談所とかいろいろとあるわけですが、これをうまく機能させていくためにどういうふうにやっていけばいいのか。三人の参考人から御意見を聞かせていただければと思います。

古賀参考人 先ほどもネットワークというお話をさせていただいたんですが、いろいろな部署が例えば学校を窓口としてつながり合うということができれば、実務家の、今お話しの動員部隊の協調というのはかなりできるんですね。学校の先生が全部それをやるというんじゃなくて、学校を窓口として、そこを使っていろんなものを集めてくるということがまず一番早い方法論ではないかと私は思っております。

 同時に、そこでは情報の共有も非常に重要です。先ほど出ました個人情報なんかも、そこで共有していく分には集団守秘義務という形でやれることがございます。ですので、そういうネットワークをつくる起点を明瞭にしていくということ、これをやっていただければというふうに思います。

 ついでに申しますと、若者相談窓口というものの設置を内閣府も呼びかけておりますが、こういうところもそういう援助の非常に大きな入口になると思っております。

野村参考人 質問ありがとうございます。

 こども家庭庁を中心にした総合行政の実施というのは、国の法律の仕組みを考えると、基本的には市区町村で実施されることが多いので、この市区町村での総合行政の取組というものの後押しがとても重要だというふうに思っています。

 そのために、こども家庭庁の設置法とそれからその実体法になる基本法の理念をきちんと通していくということがとても大事で、今、設置法及び基本法を拝見すると、法律が並んでいるんですけれども、法律を寄せ集めることはまず第一にとても重要だと思うんですけれども、法律を寄せ集めただけでは、多分、総合行政にはならない。もちろん、隙間があるということは分かると思うんですけれども、基本法に基づく理念に従って、それを再構成し直して、それを提示して、市区町村でそれを実施していく、市区町村がそれを頼りにできるというような、そういう仕組みをつくり上げていくということが大枠ではとても大事だというふうに思います。

 もちろん、アクターはいろいろあるので、今御指摘にあったようなことはたくさんあると思うんですけれども、大枠として私が感じているのは以上です。

末冨参考人 私は、スライドの二十六ページを使いながら説明をさせていただきます。

 先ほど古賀参考人に御質問がありましたデータ連携につきましては、私も内閣府の方で議論に携わっておりましたが、データを整備しても、それを見て支援につなげる専門家がいなくてはなりません。それが、本日申し上げた子供ソーシャルワーカーになります。データ連携を見たり、あるいは地域や子供自身から心配事が分かったといったときに司令塔となる職は、必ず全ての自治体に必要です。

 ただし、あわせまして、学校をプラットフォームとした子供の貧困対策、子供支援ということを考えれば、学校、園にも常勤のスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーを設置し、常に子供を見守り、保護者にも丁寧に関われる体制の整備が必須になるというふうに考えます。

 あわせまして、この仕組みに、ここからより充実されていくであろう子供の権利の擁護の仕組みも含めて、どのように有機的な連携を保つかと言われれば、やはりキーは司令塔となる子供ソーシャルワーカー、そして、子供ソーシャルワーカーと共同していくスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの常勤の専門職の方たち、スクールローヤーやあるいは子供オンブズパーソンといった方たちもそこに含まれると思いますが、手厚い人員配置が必要となると考えます。

 以上です。御質問ありがとうございます。

石原(宏)委員 次に、土肥参考人にお伺いします。

 子供、若者の社会参画、また子供議会、会議、若者議会、会議等に御尽力をいただいているんですけれども、ちょっとこれは素人的な質問になっちゃうかもしれませんが、子供会議というのは、資料を見るとゼロ歳から書いてあるんですけれども、実際には何歳ぐらいからが有意義なのか。

 また、若者の会議の対象というのは、例えば、十八歳以上で二十九歳ぐらいなんですけれども、一緒に、十八歳から二十九歳、合わせた方がいいのか。

 あと、実は、こども政策の推進に係る有識者会議の議事録を見ている中で、古賀参考人から土肥参考人の方に、実際にこういう会議に参加する若者とかお子さんというのは、どちらかというと非常にアクティブな、積極的なお子さんで、どうしても消極的な若者や内気なお子さんは参加をしないんじゃないか、そのデバイドが生じているんじゃないかという質疑があったんですけれども、これを埋めていくために何が必要なのか、土肥参考人にお伺いできればと思います。

土肥参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、子供議会、若者議会については、自治体によって本当に多種多様で、一概には言えないんですけれども、子供議会、子供会議と、子供とつく場合は、小学生あるいは中学生が対象になっている場合が多いというふうに考えていただければと思います。若者議会という名前になると高校生以上が、印象としてですけれども、多いような印象を受けております。

 どの年齢がよいかというのは、これもどこがよいということではなくて、小学生、中学生、高校生、あるいは幼稚園児、保育園児の中でも様々な関心がありますので、それぞれの中で意見表明の機会があるということが重要じゃないかというふうに僕は考えています。

 アクティブな若者、子供たちが参加をするのではないかということなんですけれども、これは本当にいろんなやり方がありまして、一つ事例を紹介させていただくと、山形県の遊佐町というところがあるんですけれども、そこは少年議会というのを十四、五年ぐらい取り組まれておりまして、そこは全国でも、私が知る限りでは唯一、選挙で子供、若者たちの委員を選ぶというのをやっております。選挙で選ばれた子供たちは、その後、町の代表ではあるんだけれども、選ばれてはいるんだけれども、実際に子供、若者たちの代表であるということで、町の中学生、高校生に対して実施するアンケートから自分たちの意見を考えていくということをやっていまして、子供議会、若者議会の運営の中でも民主主義というか民主制を担保していくということが重要じゃないかというふうに考えます。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 末冨参考人にお伺いします。

 子供の基本法が非常に重要だということを言われているわけですけれども、四月十四日の毎日新聞の記事にも末冨参考人の記事が載っておりまして、その中で、子供の権利擁護のための組織、機関ばかりが報道され、子供たちの権利利益の擁護を推進する上での基本法の意義についての報道が不足していることを強く懸念するという記事が載っておりました。

 今回提出されている与党の議員による基本法、また立憲民主党そして日本維新の会から提出されている法律については、先生が考えられている基本法の重要性というのは全て網羅されているというふうにお感じになっていらっしゃるのか、それとも、ここはこれが足りないみたいな御意見があるのか、ちょっとお聞かせいただければと思います。

末冨参考人 御質問ありがとうございます。

 今次国会において提出されております各党の法案においては、いずれも、児童の権利条約に定める一般原則の最も大事な四つの規定がございます。特に、最善の利益の規定につきましては、これをベースに子供政策が進む、そして、意見表明権あるいは保護され愛される権利なども含め、大変意義深いものになってございます。こうした時代にあっては、差別がないということも大変重要な規定でございますので、私自身は、子供の権利の基本法として必要な要件は全ての政党が満たしておられると思います。

 その上で、では、不足する内容があるのかということにつきましては、実は、進化のプロセスでこそ、子供、若者の意見の表明と尊重をお願いいたしたく存じます。

 それはなぜかというと、児童の権利に関する条約には子供に関する四十もの権利がございます。いずれも大事な権利なんですが、私自身は、教育学の研究者としては、遊ぶ権利や休む権利、当然のことながら学ぶ権利も大事なんだけれども、ではあなたたちはどう思うのかと、子供たちや若者たちと意見を交わしながら進んでいく国会であってほしいと願っております。

 以上です。

石原(宏)委員 残すところあと三分になったんですけれども、陳述とは少し離れてしまうんですが、古賀先生の論文というか執筆された中で、引きこもりについてのちょっとあれがありまして、それを読んでいて、その後も、いろいろなアンケート調査みたいなのが出ていて、いろいろな引きこもりの理由があるんですけれども、いじめだったり、勉強が苦手だとかあったりするんですが、ただ、私がちょっとその記事を読んだ感じだと、やはりコミュニケーションを取るのがなかなか苦手みたいなお子さんが引きこもりになるみたいな印象を受けたんです。

 そのときに、では、その予防策として、先生のいろいろな記事を見ていると、なるべく子供の頃から社会へいろいろ参画させるみたいなことがありますけれども、引きこもり、なかなかなくすのは難しいと思うんですが、先生が御研究されている中で、やはりなるべく小さな頃からいろいろな社会というか、他人との触れ合いみたいなものを増やしていく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、その秘策みたいなことを、先生が考えているものがあればお聞かせいただければと思います。

古賀参考人 御指摘のとおりで、いろいろなアンケート調査の結果で見ても、引きこもり傾向の子供たちも、場になじめないとか、コミュニケーションに非常に重みを感じて疲れるというようなことを回答しております。

 私は、思っているんですが、いろいろな場に入っていくことがすごく重くならないような関わり方で社会参加ができるものというのはあると思うんです。入ってすごく活発じゃなきゃいけないみたいな、そういうある種の参加の幻想みたいなものに先にとらわれてしまうと入れなくなっちゃう人がいるので、まず入っていただくことを大事にしていく働きかけが要ると思います。

 学校の先生方なんかも、こういう話をしますと、少しほっとするな、関わり方、一声挨拶をかけることでも随分違うんだなみたいになっていかれると、すごく触れ合えることが多くなって、それは大変それから先の社会に関わる大人たちへのイメージを変えていきますので、やはりそういう地道な作業が要求されているんじゃないかと思います。

 NPOなんかでは、ささやかな一歩からとよく言いますが、そういったことは非常に大事になっていると思います。

 以上です。

石原(宏)委員 時間が来ましたので、終わります。

 ありがとうございました。