憲法問題を考える

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前回の復習

憲法とは?

石原「前回は「憲法って何?」という問題と、「なぜ今憲法改正なのか?」という問題を簡単に話してもらいました。 」

山本「そうですね。初心者向けにお話したので、かなり大雑把な説明をしたと思います。
少し『おさらい』をすると、
  (1)『憲法』とは、民法や刑法といった『法律』とはまったく違うということ
  (2)我々『国民』を縛るのではなく、『国家(権力)』を縛る
という二点が重要ですかね。 」

石原「その二点は大事ですね。国民の『三大義務(教育、勤労、納税)』とかも載っていて、『憲法』は僕らを縛る『ルール』で、『刑法』と同じような『法律』のように感じるけど、実際には国家権力を縛って国民を守るものなのですね。 」

山本「ええ。大学の試験で、『憲法とは何かを書きなさい』という問題を出すと、『憲法とは○○の法律である』と解答する人がいますが、これはまったくのペケです。」

石原「なるほど。でも、確かに『憲法』は『法律』とまったく次元が違って、場合によっては『法律』を覆す力をもっており、国会議員が一所懸命作った『法律』にしても、憲法に反すれば『無効』になることを考えれば、理解できます。 」

山本「そうです。なので、ペケです。まあ、憲法も『六法』の一つですから『民法』『刑法』と同列のように感じるかもしれません。ただ、やっぱり次元の違うものなのです。
月とすっぽん(*1) 。だから改正の手続もまったく違います。 」

石原「『法律』は基本的には国会の衆参両院で可決すれば成立するし、それと同じ方法でそれぞれの法律の改正(憲法59条)もできるわけで、しかもこの可決は過半数(憲法 56 条 2 項)と比較的簡単ですが、それに比べて憲法の改正はどうでしょうか。 」

山本「法律の改正は少なくとも、憲法の改正手続よりは簡単です。憲法改正を定めた憲法96 条をみると、憲法改正は国会各議院の 3 分の 2 以上の賛成でようやく発議され、さらに国民投票で賛成されなければならない。要するに『国会』の発議→『国民』による賛成という 2 段階を経る必要がある。これは一苦労です。 」

石原「法律は国会の中だけで決められるが、憲法は国民の判断を仰ぐわけだから、確かに、断然『法律』の改正より難しい。 」

山本「ええ。ただ、この『難しさ』にもちゃんと意味があります。憲法は国会議員を含め、国の権力者を縛るものですから、権力者の都合で変えられちゃまずい。だから『難しい』。」

石原「つまり、改正手続が法律と同じように『簡単』だと、権力者(国家)にとって都合のいい『憲法』になってしまう。いわゆる『立憲主義』の思想には反するのでは。」

山本「その通りです。権力者の都合で変えられれば、国家権力から国民の自由・権利を守る『憲法』の役目が果たされなくなる。だから、憲法の改正手続はそれだけ『難しい』わけです。これを『硬性憲法』(*2)といいます 。」

石原「『硬性』。 つまり憲法は法律よりかたい…。でも、手続が難しいから変えられないということではないんだよね。国会がきちんとした改正案を出して、国民が納得すれば改正できる。政治家は、時には憲法によって縛られる『権力者』になるけど、逆に憲法改正の発議をする役割を担うこともある訳だ。これから、僕たちのような若手の政治家には、これからの日本にふさわしい憲法はどうあるべきかを国民に向かって発信して、国民全体の議論を深めていくことが益々重要になる。このページを立ち上げたのも、石原ひろたかとしての発信をしたいからなんだ。」

〔なぜ改正?〕

石原「今、憲法改正論議が活発だけど、前回、 『いまなぜ改正か』という点について簡単に話してくれましたが。」

山本「本当に簡単に…。よく言われるように、いまの日本国憲法は施行されてからもう少しで還暦を迎えようとしている(*3)。古くなってきているわけです。」

石原「ところどころほころびが出て来ていると、多くの国民が感じていることですね。」

山本「ええ。ただ、本当はもっと突き詰めた議論が必要です。年をとったから変えろ、という考えは、あまりに安易。この前、その話を授業で話したら、生涯学習で来ている還暦間近の女性の学生さんに叱られました。『年をとってからいい味がでる場合もある!』って(笑)。」

石原「年をとったから変えろっていうのは、理由として短絡的。うちの親父も未だに元気だし、年齢だけで決めるのはナンセンス。でも、そうであれば、なぜ今憲法改正がここまで盛り上がるのでしょうか?」

山本「いくつかの理由が重なり合っていて、なかなか整理が難しいです。ただ、大別すれば、総論的改正論と、各論的改正論に分かれるような気がします。総論的改正論とは、いまの日本国憲法の『全体』に対して文句がある見解。日本国憲法の全体が気に食わない。『押し付け憲法論』は、こっちの類型に属するような気がします。各論的改正論は、日本国憲法の全体には特に文句がないのだけれど、所々気になる。時代に合っていない憲法条項の一つ一つ点検していこうとする考えです。 」

石原「各論的改正論は、今後、順次検討していくとして、次回は総論的改正論について説明してもらい、議論しましょう。」

山本「では、『押し付け憲法論』が一体どんなもので、どのような問題を有するか検討し、石原さんの意見を聞かせて下さい。」

*1 月とすっぽんの語源について一言。
江戸時代の随筆『嬉遊笑覧』によれば、すっぽんの甲羅も月も両方「丸い」が、この二つの「丸」はあらゆる意味で大違い、ということから来た言葉ということである。「憲法」も「法律」も、両方「規範」であるが、その意味するところは大違い。まさに「月とすっぽん」である。
*2 逆に、法律と同じ手続で改正できる憲法のことを『軟性憲法』と呼ぶ)
*3 日本国憲法は1947年施行である)